カモシカの死と春

春が近づき、雪解けが進んだある日。
登山口近くの雪の上で、カモシカの亡き骸が見つかりました。

どうしてこんな所で死んだのか、死んでから何日経ったのか。
何も分かりません。
町の教育委員会の方が、連絡後にすぐ引き取りに来てくれたそうで、
「大人のカモシカ。もしかしたら年をとって冬を越せなかったのかも」
という話だったそうです。
冬の間、谷川岳のロープウェイの線下は、数頭のカモシカの行動範囲になっているようで、毎日のように彼らの姿を見る事ができました。
雪に埋まらなかった木の芽を探して歩き回るので、足跡を追うと見つけられる事があります。

二頭で動いているのは、おそらく母子でしょう。
カモシカの母は4~6月頃に出産し、翌年の春までおよそ一年間、子と一緒に過ごすそうです。
今年はひと晩で1m近く雪が降る日もあり、ここ数年では雪の多い年でした。
西黒沢は沢底が雪崩で埋まり、さながら整備されたゲレンデのよう。

写真中央右手の沢では、木がなぎ倒されているのも見えます。
風雪の日もカモシカは山の斜面をラッセルして、凛と立っている姿を見せてくれました。

スキーコースを歩いていることもありました。
写真中央に小さく写るのが分かりますか?

雪が多くてラッセル疲れちゃったのかな?などと話していました。
すぐ近くで写真撮影に応じてくれることもありました。

そんなカモシカ観察の日々が続いていたのですが、ある日の夕方、車道すぐ近くにいたのです。
ここは、あの亡き骸のカモシカが見つかった場所と20〜30メートルしか離れていません。
この後、大雪があり、しばらく経って春らしくなってきた頃、亡き骸が見つかったのでした。


今日はずいぶん下に降りてきてのんびりしてるな、と思ったのですが、もしかしたら、この個体は体が弱って山に戻れず、スキーコースをずっとうろついていたのかも。
そんな中、スキーで追いかけたり、随分怖がらせてしまいました。
さわれないぬいぐるみのように、または動物園の動物ように、ロープウェイの上から彼らを眺めていたけど、ここはやっぱり野生なのでした。
春を迎えられなかったカモシカ。あの時は怖がらせてごめんなさい。
どうかまた、次の世代として山に戻ってきてくれますように。