秋の研修。北アの職人仕事、尾瀬の語りべ
11月に入るとそろそろ山は雪の便り。私にとってはガイドの研修のシーズンになります。
先日、印象深い2つの研修がありましたので、記録に残しておきたいと思います。
北ア南部の登山道保全 石組みは職人仕事です
まずは上高地。
1日目は河童橋の混雑を通り過ぎ、岳沢に登る登山道。
過去の施工場所を歩き、講師の先生が解説をしてくれます。
このような木のステップは「歩きやすさ」を目指しているのではなく、土留めの役割があるんだそう。
人間の便利より、自然の中で道が長持ちする事を優先するのですね。
それから、石の多い山域では石組みがメインになるそう。
先生が「北ア南部で一番の石組み」と見せてくれたのは、岳沢小屋直下の石階段でした。
この先にはお寺か教会があるかと思うくらい、きれいにできています。
人力で動かしたというのが信じられないくらい、大きな石も使われています。
何十年も耐えている石組み、小屋の方などによって維持されてきたそう。
前に通った時は、全く気づかなかったな~!!!
二日目は実際に石を使った登山道の補修を体験しました。
受講生の中には、めちゃ大きい石を動かしてきた方も。
パワーすごい。
1時間くらいで出来上がった石組みは、周囲の森に良く馴染んで見えます。
全く知らない人が通ったら、たぶん今日施工したとは気づかないと思います。
講師の先生が、過去の施工個所について、1つ1つすごく詳しく覚えてらっしゃったのが印象的でした。
どんな石をどんなふうに据えたかまで、覚えているそう。
いつか子供さんが山に来た時、お父さんの作った道があるといいと思う、という事を仰っていました。
日常のメンテナンスは、山小屋の方と一緒に行うそうです。
講師の先生と、研修を企画してくれた先輩方に感謝。
受講生もいろんな地域から集まっており、旅行業や執筆業に携わっていたり、様々な立場の方がいて良かったです。
下山時、初冠雪の上高地は、山稜が美しく光って見えました。
ちなみに、この研修では、日本山岳ガイド協会の研修所『上高地アルプス山荘』に宿泊しました。
河童橋へ徒歩5分という最高の立地にあって、たぶん周りのお宿の3分の1くらいの料金で泊まれます。
お布団引きがセルフサービスだったり、山小屋的な部分もあるのですが、それを厭わなければ、登山にも散策にもお薦めです。
ご飯もとっても美味しいです。
夕食のメニューはいろいろ変わるようですが、この日はトマトクリームソース?のロールキャベツでした。
前菜とスープ、デザートもついて、コース仕立てなのです。ぷは!😋
ガイド協会の正会員の紹介があれば泊まれます。興味ある方はご連絡くださいね。
尾瀬の語りべ レジェンドと歩く尾瀬
さて、上高地から帰って来て次の日は尾瀬ガイド協会の研修。
雪が少しちらつくような寒い朝でした。
かつて尾瀬の玄関口であった、富士見峠に向かう道を皆で散策しました。
講師は松浦和夫さん。
元片品ガイド協会の会長さんであり、尾瀬・戸倉の歴史をその足で歩いてきた方です。
中学生の頃、初めて尾瀬に馬を曳いて行った・・・という逸話から始まる著作『尾瀬の語りべ』があります。
実際に松浦さんが、毎日、毎日、馬を曳いて通っていた道…
冬枯れの林道にいると、登山客が大挙して歩いた当時の様子が、夢のように思われました。
午後は松浦さんがご自身で集めた木材で建てられた、私設の資料館『おぜの山愚楽(やまぐら)』へ。
建物も素敵ですし、展示物も通り一遍でなく、松浦さんと家族が尾瀬で暮らしてきた様子が分かります。
木こりの道具や、猟で仕留めたツキノワグマやさまざまの毛皮など。
仕留めたものの中で一番大きかったというツキノワグマも必見です🐻
後半はスライドショー。
そして、このお部屋、暗くなるように作ったというのも、スゴイ!
尾瀬の湿原回復の話から、
馬が可愛い話、馬は食べるのが遅いこと、
遭難者捜索のこと、浮島を作った話、、
クマ狩りのことなど、楽しかったなぁ!
興味ある方は、松浦さんの著作をぜひぜひ買って読んでいただきたいです。Amazonにありますので。
むかし、馬を曳いて歩かれていた道、戸倉から富士見峠を経て尾瀬ヶ原、一度歩いてみたいなと思いました。
そうそう、見晴にある尾瀬小屋の洗面台のシンクは、松浦さんが背負いあげたものだそうです。
50年?経って、まだ現役ピカピカで使われています。
今度泊まったらじっくり見てみたいです。
尾瀬ガイド協会には今年から加入したのですが、この日来られただけでもペイしたというか・・・。
それくらい、参加できてうれしく思いました。
こちらも講師の松浦さん、企画してくださったガイドの先輩方に感謝です。
そう、人数制限で参加できなかったみなかみのガイドの皆さんも、ありがとう・・・・!