ブナの森と飯山への旅
紅葉シーズンが終わり、みなかみは一気に静かになりました。
11月は旅とインプットの時期、ということで飯山の全国トレイルメンテナンス・シンポジウムに行ってきました。
前半はアメリカのアパラチアン・トレイル(AT)の、地区マネージャーをしているセーラさんのお話。
会場は満員。
最近、登山道整備は各地で話題になってるのもあるけど、山小屋の人や行政の人、色んな方が。
みんな困ってるってことなんだと思います。
ATは、アメリカ北東部のアパラチア山脈を歩く、全長3,538㎞のトレイルです。
日本を代表するロングトレイル、信越トレイルはこちらをお手本にしているのだそう。
その運営体制の特徴。
30のボランティア団体(トレイル・クラブ)と、80以上の行政管理団体、そしてATCというNGOが共同管理してるそうです。
他のトレイルと異なり、国立公園局でも、森林局でもない管理というのは、アメリカ国内でもユニークなんだそう。
法的根拠があり、公的支出で支えられてるからこその活動かと思いきや、最初は事務局サイドもみなボランティアだったそう。
長年の努力で築いてきたものだとのことでした。
管理の方法がアップデートし続けているのと同じく、ルートどりも変わることがあり、
より良い場所に付け替えることがあるので、トレイルの長さは変わるのだそう。
ボランティアも何十年も関わっている方もおり、次の世代にも力を入れているとのこと。
ATCの三本柱は『守る・体験・所属する』の三つだそうです。
所属、というのが新鮮。ボランティアあってこそなのですね。
信越トレイルの紹介をはさみ、後半はシンポジウム。
ATCから生態系保全など技術系のお仕事をするマットさんが、実際のお仕事を話してくれました。
日本側からは、近自然工法による登山道整備に取り組む大雪山山守隊の岡崎さん
三俣山荘のご主人で、北アルプスの登山道補修や山小屋整備をする伊藤さん
が中心にお話されていました。
トレイルの持続性の話、若い世代の育成の話、技術より仕組みづくりをしないとダメ・・・などなど。
最後の方に「カッコよさは大事」という話になりました。
岡崎さんが「マットさんの仕事を見て、子供たちはどう反応しますか」
と問うと、マットさんは、
「たくさんの子ども達が同じ仕事をしたい、どうしたらなれるのか、と言ってくれる。自分もインターンシップの受入れなど、可能な限り対応している」
と仰っていました。
その後に、林野庁の方に話をふったファシリテーターの方は、かなり洒落っ気があった・・・
2日目は壊れそうなトレイルの場所に、どんな手当をしたら良いか考えるワークショップ。
まずは座学。ATのトレイル整備の理念のさわりを聞きます。
何より大切なのは、『Keep water off the trail, and Hikers on the trail』とのこと。
実際に使われているボランティアフィールドブックを見せて頂きました。
このリングノートみたいな簡易製本で、ちょっとヘタっとしたフォント、昔のアメリカのクライミングのガイドブックでもよくある~
この挿絵も、昔のトポに似ている!顔怖い。
なんかイイな。
その後は、実際に外に出てフィールドワーク。
壊れかけているトレイルの手当の方法を考えてみます。
ここでは水の流れと、どのあたりで水抜きをすると良いかなど。
ATCのお二人からは、リルート(道の付け替え)の話が何度も出ました。
マットさんは、課題に直面したら、少し距離を置いて俯瞰してみることが大事、と繰り返していました。
それに対し、岡崎さんが施工する場所は、多くが国立公園なので、道を変えるのが非常に難しいとのこと。
公園計画を書き換えるのって、そんなに大変なのでしょうか?
共通して仰っていたのは、しっかり設計して施工すれば、追加のメンテナンスが必要ないこと。
自然の力で復元していくので、トレイルを歩く人も気づかなくなるそう。
岡崎さんは「風景を作る」、「できるだけささやかな存在でありたい」と表現されていました。
次はこちらの川べり。
この風景の中で、どこか違和感のあるところはありませんか?との問いかけ。
一部分、路肩(というのか?)が崩れて植生が無くなっている箇所があります。
この急斜面の間は、細めの丸太を組んだ階段になっています。
まずは周りの自然を観察し、原因を推定します。
それから、岡崎さんが自分ならこうやって手当てする、というのを解説。
繰り返して仰っていたのは、原因は一つでないということと、正解が無い、ということでした。
道の崩れも、水の流れ、傾斜が変わること、木の階段の影響、もしかしたらシカが通った?などなど、いろいろ考えられます。
一つに決めつけてしまうと、失敗しやすいそうです。
会場周辺は素晴らしいブナの森。
このあたりはスノーシューをするのにも良いフィールドとのこと⛄
絶対楽しいやろー
少し前は紅葉が素晴らしかったのよーと、信越トレイルの会員?の方が教えてくださいます。
講習や研修、行くまでちょっと大変だけれど、新しい話が聞けること、
それから全国の方と仲良しになれるのが良いですね。
そして、ずっとSNSなどでフォローしていた岡崎さんの話、現場で聞けてよかったな~
全てのきっかけは、北杜山守隊のツアーに参加したことを、教えて下さったお客様の話からでした。
それ以来、谷川岳も三国山、平標山も、どこを見ても手当が必要な所ばかりというのが、よく分かってきました。
感謝、感謝✨✨
ところで、夜は野沢温泉にお宿をとり、夕食はガイドの先輩が始めた居酒屋さんに。
外観もインテリアも、見た目はおしゃれなカフェバーですが、お料理がとても本格的!
この日はコイやイワナのお造りにフライ、手作り野沢菜漬け、信州牛の鉄板焼きも頂きました。
食べすぎー😂
Kahu bar(カフバー)🦅野沢温泉の中心街にあります。
オフシーズンは週末のみの営業とのこと。
お店が広くは無いので、ゆっくり飲み食いしたいなら予約が良さそうです。