平標山登山道整備プロジェクト 第1回活動レポ

完成が近いステップ

平標山で登山道整備プロジェクトが始まりました!

平標山の木道は30年以上前に作られました。

これまでは主に、というかほとんど、小屋番さんが手入れをしてくれていたそうです。しかし、年々土砂が溜まったり、木道が傾いたりが目立ってきていました。

約30年前の平標山の木道
約30年前の平標山の木道 写真提供:Oさん

そして、2024-25の冬シーズン、大雪+極端な昇温で全層雪崩が発生。

山の家から山頂間の木道には大きな被害が出ました。

平標山の登山道整備プロジェクトは、昨年度(2024年)から計画されていましたが去年はお天気が悪く中止。

そして8月10日、やっと第一回目を迎えることができました!

専門家の講師を迎え、ボランティアの方々や行政の関係者と一緒に、作業に参加してきました。

ジグザグに完成したステップ 歩いてみる
平標山に向かう道、完成したステップ

前日は第1回たにがわトレイルサミット

ところで、登山道整備の前日は、谷川岳ヨッホ天神平にて「たにがわトレイルサミット」と銘打ち、トークショーが開かれました。

「持続可能な山岳保全に向けて、今できること」

これをテーマに、トレイルについて4名のゲストが色々なお話しをしてくれました!

たにがわトレイルサミット photo by Oさん

こちらから講演資料を見る事もできる(2025/8/12時点)のです!お得だ!

興味ある方はぜひDLして読んでみてください!!

私はちゃっかり受付係として潜り込み、終日特等席からトークを聞きました。奇跡的に終日雨も降らず、猛暑も影をひそめ、快適に過ごせた一日となりました。

楽しく受け付け係  photo by Oさん

稜線トレイルはずっと気になっています。せっかく新しく整備された箇所もあるのに、もったいない。

とくに志賀高原~三国峠間は、マイナーですが、静かで素晴らしい稜線です。交通アクセスを工夫して、ガイドツアーをやってみたいと思っています。

登山道整備 一日の流れ

さて、登山道整備を振り返っていきましょう。

翌10日はあいにくの雨。ですが、たくさんの方が平標山の登山口に集合してくれました。

ここから手分けして平標山の家まで、土嚢袋などの資材や、スコップ、てみのなどの道具を運びます。

林道を資材や道具を持って歩く
林道を資材や道具を持って歩く

標高差400m、1時間ほどの道のりですが、歩荷というには軽すぎる荷物でも、普段と違うものを背負うとなんだか堪えます。

山の家に着いたら休憩後、40名あまりの参加者とスタッフ、山の家の小屋番さん達も入って5班に分かれます。

この日は風が強かったので体調管理についての注意と、自分勝手な行動をしないよう注意がありました。

登山道整備の資材と道具
各班に資材と道具が配られます

6-7人ごとに班に分かれ、リーダーの指示のもと資材と道具を背負い、現場に移動します。

山の家から山頂間なので、現場に行くのもなかなか坂道!体力勝負です・・・・

事前に講師の先生たちによって、手入れが必要な箇所に番号が振ってあり、優先順位の高いものに取り組みます。

最初にステップの作り方について、考え方の説明と、デモンストレーション。

ステップの作り方のデモンストレーション
ステップの作り方のデモンストレーション

この場所は、土が流れてしまって段差が高くなり、登山道脇の笹が踏みつけられてしまっていました。

ここにステップを作り、段差を小さくします。人間も歩きやすく、登山道脇の植生も守れます。植生があると、土が流れて道が壊れるのも防げます。

ステップに使う材は、壊れた木道を加工したものです。

作業する人と歩く人
雲が晴れた瞬間は作業の様子が見えた

その後は班ごとに作業開始、午前中と午後でおよそ2時間ずつ作業し、14時半頃に山の家から下山しました。

登山道整備の作業内容 ステップづくりと側溝掘り

作業内容は班によって2つに分かれました。

私の参加した班はステップづくり。木道が壊れてしまった場所は多くの登山者が歩いたため、2、3か月でかなり踏み固められていました。

放置すると登山道に水が流れ、どんどん道が削られてしまいます。

講師の先生と一緒に水の流れを考えながら、歩きやすく、壊れにくいステップを目指します。

使う材木は、かつて登山者をささえてきた木道の廃材です。長さを整えたり、杭状に加工したり、手分けをして進めます。

壊れた木道を利用してステップを作成
壊れた木道を利用してステップを作ります

平標山の木道に使われている材は防腐加工がしており、処分する際の難点になると聞いていましたが、こうして再利用することもできるのですね。

土の中にしっかり埋めてしまえば、酸素がないのでより腐食が進まなくなるそう。

完成したステップはこんな感じになりました。

斜めにステップを作っているのは、水の流れの勢いを減らすためだそう。段差の高さも小さいので、歩きやすい印象です。

ステップの間には土砂を詰めて行きます。最初はフワフワしていても、だんだんと安定するのだそう。時間が経ってこれがどうなるか?楽しみです。

同じ材料を使っても、いろいろな作り方ができます。

こちらはもう一つのステップづくり班の施工個所。先生の得意分野や、道具の有無で、資材の使い方も変わってきます。

残った木道の杭などを利用している

そしてもう一つの大事な仕事は、側溝掘りです。

木道と同時作られた水切りの側溝は、多くが土砂で埋まってしまっていました。ある程度は小屋番さんが掘り出していたそうですが、お一人ではとてもでないけどやり切れない数です。

水切りが機能しないと、雪解け水や雨水が登山道を流れ、土を掘り、道を壊してしまうという悪循環に陥ってしまいます。

土砂を掘り上げて、水の道を復活させる作業です。

側溝に溜まった土砂
側溝に溜まった土砂が掘りあげられた

この土砂は土のう袋に詰めてステップ班に運び、ステップづくりの材料にしました。

ここでも、厄介者になっていたものを利用できるのですね。

昨日のトークショーにゲスト出演してくれた、田中陽希さんは誰よりもたくさん歩荷されていました。

背が高いのでこの姿勢、めっちゃつらいと思うのですが・・・お気づかい!!

歩荷する田中陽希さん
歩荷する田中陽希さん(ヘルメットの方)

私もほんの少しだけですが、土のう袋の運搬(ボッカですね)をやってみました。

とっても重い。

湿った土と石がずっしり重量感で、一度に2つしか運べませんでした。25㎏くらいあるのでは・・・?

土砂を詰めた土のう袋を運ぶ
土砂を詰めた土のう袋を運ぶ photo by Mさん

平標山登山道整備プロジェクト 第一回を終えて

今回は第1回、3-4カ所のステップ製作と、数か所の側溝掘り上げができました。

このイベントは9月にも予定されています。今日作業をした箇所がどんな姿になっているのか?見るのが楽しみです。

企画から準備まで尽力された皆さま、当日のボランティアの方々、大変お疲れ様でした!

先生の言葉で印象に残ったのは、「間違いは無い」という一言。

私が「これは先生がいないと、何が正解か分からないですね~」と言った事に対する言葉でした。

間違いは無い(分からない)というのは、たぶん正解も無い/分からないという事なのだと思います。謙虚な考え方だと思います。

時間の経過とともにステップが機能するかが見えてくるので、観察しなきゃ分からないのですね。

ところで、トレイルサミットのトークセッションは「持続可能な登山道」というのがテーマでしたが、私はこの持続可能という言葉にいつも引っかかります。

もしかしたら、今のルートは変えた方が良いかもしれないし、道を直すより先に登山者数の制限や、登山禁止期間を設けるべき場所もあるかも、とか考えると・・・

持続可能の意味は難しいです。

めんどうくさいヤローですね。

登山道を継続的に直すのも大事ですが、人気の山に人が集中し、過負荷になることが根源的な問題なので、そこへのアプローチも必要だと思います。

ていうか、そもそも混んでる山って楽しくなくないですか?!?私は苦手です。

夫によると、山が混んでいるとどんどん機嫌が悪くなるらしいです。

とんだ迷惑ヤローですね(笑)

谷川岳は年間4万人が登山するのだそうです。

年間通して1日100人ずつならいいのですが、天気の良い連休、天神尾根に2000人という感じになります。

それに耐えられる施工は「正直難しい、ちょっと悩んでいます」と先生がおっしゃっていました。

それを考えると、稜線トレイルだったり、県内のマイナー名山だったりを歩いて、実効的な意味で紹介していきたいなと思います。

ま、何より静かでいい山域なんですよね。

何をするにも、自然を観察する視点を磨いて、謙虚な姿勢を持っていたいです。